食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎に対する手術件数が2年連続日本最多になりました

内視鏡外科 部長 竹村 雅至

内視鏡外科部長の竹村と申します。

当院消化器外科では2017年以降、食道に発生する疾患に対して積極的に外科的治療を行なってきました。食道に発生する疾患は悪性の疾患と良性の疾患に分けられますが、良性の疾患が大部分を占めます。食道の良性疾患では「逆流性食道炎」や「食道裂孔ヘルニア」がその代表的な疾患で、悪性の疾患は「食道癌」がその代表です。逆流性食道炎と食道裂孔ヘルニアの症状は酷似しており、両疾患とも食道への胃酸逆流により様々な症状が生じます。これらの症状に対しては胃酸逆流を抑制する内科的治療が適応になり、多く方では症状の改善が得られます。しかし、なかには内服薬によっても症状が持続するか改善しない方がおられ、このような方には外科的治療が適応になります。

しかし、食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎に対する外科的治療は海外では多数行われているものの、日本では手術件数が少なく、さらに本手術を積極的に行なっている施設は非常に少数です。当院では食道疾患を専門的に診療する外科医が4人在籍しており、食道の様々な疾患に対して積極的に手術を行ってきました。これにより、2020年と2021年の2年連続で食道裂孔ヘルニア・逆流性食道炎に対する手術件数が日本最多になりました

本邦の食道裂孔ヘルニアに対する手術件数の集計

 

 

手術件数が増加することで手術が安定化し、手術時間が短くなり治療成績が向上しました。
さらに、これに伴い大阪府以外の地域から外科的治療を希望され当院へ来院いただける方が増加しております。

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食道裂孔ヘルニアに対する手術の適応は厳密には決まっていません。これは悪性疾患(いわゆる「がん」)とは異なり、食道裂孔ヘルニアの存在により命に関わる状態になる可能性が非常に少ないことと手術件数が少ないことによります。また、手術適応を決めにくい大きな要因として、食道裂孔ヘルニアの大きさと逆流症状の強さは相関しない方が比較的多いこともあります。つまり、食道裂孔ヘルニアが小さくても症状が非常に強い方がおられる一方で、食道裂孔ヘルニアが大きくても症状が非常に軽度の方もおられます。このため、内服薬で食道裂孔ヘルニアやそれに伴う逆流性食道炎による症状が改善しない、または持続する方が外科的治療の適応と考えられていますが、症状の感じ方に個人差が非常に大きく手術適応を決めにくいことの原因になっています。当院では明らかに食道裂孔ヘルニアによる症状があり、内服薬では症状の改善が得られない方には腹腔鏡下手術を適応しています。特に食道裂孔ヘルニアに伴う嘔吐は内服薬では制御できない方が多く、手術により改善する方が多くあります。

どの施設でも食道裂孔ヘルニアに対しては手術件数が少なく、治療経験が少ないことが問題点です。我々の施設では非常に経験数が多いことで、術式の工夫が進み術後合併症を減らす工夫が行えるようになっています。食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎に対する手術はいわゆる癌に対する手術と異なり、ランキング本で取り上げられることはない手術の一つです。しかし、悩んでおられる方は非常に多くしかも安定して手術を行える施設は少ないため、当院では手術件数の行いことを活用しつつ安全に手術を行うことを第一の目標として、この手術を行なっていきたいと考えています。


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